節税対策

人件費関連の対策


1.臨時・決算賞与の支給
頑張って働いてくれた従業員のために期末に賞与を出します。
但し、期末までに実際に現金で支給してしまえば問題ありませんが、未払金に計上する場合は下記の要件をすべて満たさなければなりません。
  @決算賞与をもらう従業員全員にその賞与の額を期末までに知らせること
  A翌期1ヶ月以内に実際に支払うこと
  Bその決算賞与の額を経費で処理していること
  ただ、実際は、決算賞与を出したくても、いくら支給したらよいか決められない場合があります。期末までに利益が確定していないからです。だから、毎月の月次決算をしっかりと行い利益の見積を正確に行う必要があります。そうしないと、翌期1ヶ月以内の決算が不確定な段階で、賞与を支払うことになってしまいます。
2.役員退職金の支払い
退職を考えている役員がいる場合、期末までに退職すれば、支給する退職金を今期の経費とすることができます。但し、次の要件をいずれも満たす必要があります。
  @役員の退職金は原則として現実に役員を退職した事実にもとづき支給されるものであること
  A退職金はその金額が株主総会などの決議により具体的に確定していること
  B退職金は確定した決算において損金として経理されていること
  C退職金は適正な額であること
  役員退職金は高額になる場合が多く、後で税務調査で否認されないように、慎重に処理をする必要があります。
3.社員の教育研修の実施

4.社内旅行の実施
社内旅行の費用は、
  @旅行期間が4泊5日以内であり
  A全体の人数の半分以上参加したものであれば
費用を支出した法人では福利厚生費として経費処理することがでますし、
従業員も会社から旅行費用を負担してもらっても課税されません。
但し、自己の都合により参加できなかった従業員に対して、社内旅行の会社負担額相当の金銭を支給すると、その金銭の支給を受けた不参加者だけでなく、社内旅行に参加した従業員についても、給与課税が行われます。

固定費対策


1.30万円未満の備品購入
青色申告の中小企業者が、取得価額が30万円未満の備品を購入して事業に使用した場合には、その取得価額を一時に損金算入することができます。
但し、その事業年度に購入した30万円未満の備品の取得価額の合計額が300万円までに限られています。
ところで、30万円未満の備品を購入した時は、一時に損金算入せずに3年間で一括償却を選択することもでき、その場合は償却資産税の対象とはなりません。一方、一時に損金算入を選択した30万円未満の備品は、償却資産税の課税対象になってしまいます。
2.修繕等の前倒し実施
3.広告宣伝の実施
4.役員借入金利息の計上
  会社が役員から借入をしている場合、利息計算が、銀行等一般の貸付金利と比較して適正である限り、役員に支払った利息は損金として計上できます。
  この場合、利息を受け取った役員は、確定申告で雑所得として、他の所得に合算して申告しなければなりません。
5.次期販促の前倒し実施
6.短期の前払費用
  前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち事業年度終了のときにおいてまだ提供を受けていない役務に対応するものをい   います。
  前原費用のうちその支払った日から1年以内に提供を受ける役務にかかわるものを、短期の前払費用といい、次の条件を満たせば、その支出した事業年度の損金に算入できることになっています。
@一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるための支出であること
A役務の提供期間が1年以内のものに対する支出であること
B支払った日から1年以内に提供を受ける役務であること
C毎期継続して処理すること
Dその費用が収益の計上と対応させる必要がないものであること
  この規定を適用して、家賃、地代、保険料、雑誌等の購読料、諸会費などの諸費用を早めに支払っておくという決算対策が考えられます。

減価償却資産の対策


1.減価償却資産の購入
30万円以上の機械や車両を購入した場合は一度に全額を経費算入することが出来ません。
減価償却という方法で耐用年数に応じて、毎年の償却額を経費算入します。
「中古の高級外車購入による節税」を考える社長も多いと思います。
5年経過した中古車を購入した場合の耐用年数は1年となり、1年で購入額の全額が減価償却費として損金算入できてしまいます。
但し、決算期末の直前に高級外車を購入した場合、初年度は減価償却費の計算上は、月割りにしなければなりませんので、1ヶ月分の償却費(購入額の12分の1)しか損金算入できません。

2.不要な償却資産の処分
使用していない機械装置や工具器具備品などの償却資産がありましたら廃棄処分しましょう。
過去に廃棄した資産が固定資産台帳に計上されている場合もあります。期末にチェックして、既に無い資産があれば、除却損を計上しましょう。
  また、「有姿除却」という制度があります。有姿除却とは、使用していない固定資産で廃棄等を行っていない場合であっても、すでに固定資産としての使用価値がなくなっていることが明確なものについては、その現状有姿のまま除却処理ができることをいいます。

資産整理による対策


1.不良債権の処分
  @受取手形、売掛金、貸付金等が、顧客や貸付先の倒産手続き等により債権が法的に消滅しているときには、貸倒損失として費用に計上します。
  A法的に債権が消滅していないものの、その債務者の資産状況や支払能力等からみて、回収不能と見込まれる債権は、貸倒損失として費用に計上します。
  B次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金は除く)について、備忘価額を控除した残額を貸倒として損金経理することができます。
  ア 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき
  イ 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合
2.不良在庫の処分
  会社の貸借対照表には、商品、製品、原材料等の在庫が計上されています。
  決算時に棚卸しをして、数量のチェックをしていると思いますが、事前に、破損等の不良品がないか、長期間にわたって出荷されずに滞留している在庫がないかをチェックして、販売できないものは廃棄処分し、値段を下げれば販売できるものは値段を下げてでも売り切ってしまいましょう。
  

保険による対策


1.生命保険の見直し
会社で何らかの生命保険に加入しているケースは多いです。
会社で生命保険に加入する目的は、
  @役員死亡時の保障…経営者に万が一があった場合に、銀行からの借入金の返済や後継者の運転資金の確保のためにはいる保険です。
  A社員死亡時の保障…社員に万が一のことがあった場合、ご遺族に弔慰金を支給するための原資として加入する生命保険です。
  B役員・社員退職金の準備…退職金、特に役員退職金は、功績などにより高額に及ぶことがありますので、その準備のために加入する保険です。
  このような目的で生命保険に加入しますが、会社でまだ加入してない場合や、保険の種類、金額が適正でない場合は、節税対策として保険の見直しをするのも良いかもしれません。
  但し、会社契約で生命保険に加入する場合には、目的によって、選ぶ生命保険商品も、生命保険の設計方法も異なってきますので、生命保険の加入目的を明確にすることが重要です。

2.損害保険の見直し
3.倒産防止共済の加入
運営母体が独立行政法人中小基盤整備機構の共済です。
掛金(月額5,000円〜200,000円、年払いも可能)が全額損金として認められます。
得意先が倒産した場合には、売上債権(その時点の掛金総額の10倍まで)に相当する金額を中小機構から無利子で借り入れる事が出来ます。但し、無利子の代わりに、貸付を受けた金額の10分の1が掛金総額から控除されます。
掛金を40ヶ月以上継続すると、任意の解約であっても、それまでの掛金を100%返還してもらえます。(掛金総額の上限は800万円)

引当金による対策


1.貸倒引当金の計上
貸倒引当金とは、金銭債権の将来予想される損失の見込額を計上するものです。
@金銭債権を個別に評価して回収不能見込額を算定する方法(個別評価法)
A金銭債権のうち@で算定した金銭債権を除いた部分を一括して、実績繰入率または法定繰入率のいずれかを選択し、これを乗じて算定する方法
以上二つの方法を合算して算定します。
貸倒引当金の繰入額はその年の費用にすることができますが、翌事業年度には貸倒が発生しなくても、その全額を戻して収益に計上しなければなりません。その意味では、節税効果は1年限りです。